コスタリカは「パナマ」と「ニカラグア」挟まれる形で中米に位置している。
豊かな資源があるわけではないのに「中米のスイス」と称され、世界から称賛されている。僕もパナマに在住している時から何度も足を運び、個人的な旅行でもコスタリカに訪れている。なぜ、僕はこんなにもコスタリカに惹かれるのか。多分それは、ある種の憧れからかもしれない
僕がコスタリカを好きになった理由の一つに「兵士よりも多くの教師を」という言葉がある。
コスタリカは今日までの約70年間、軍隊を放棄し、非武装・中立国としてあり続けている。
そして軍事予算、税金を教育に費やしているのだ。その結果、大学まで無償化、識字率の大幅な向上が実現した。もちろん中米で行われる学力テストでは常に上位に位置している。
国名は”Costa Rica”「豊かな海岸」という意味であり、その名の通り、環境保全にも力を入れている。驚くべきことに、コスタリカ国土の約30%は国立公園、自然保護区であり、地球上に存在する鳥類の10%はコスタリカに生息している。そして手塚治虫の「火の鳥」のモデルとなったとされている幻の鳥「ケツァール」も生息している。ちなみに僕はまだ一度も見れたことはない。
コスタリカの首都、サンホセにはとても美しい国立劇場がある。僕も何度も足を運び、時折クラシックコンサートを聴きに行ったりもしていた。コスタリカが戦争をしない理由の一つに、「この国立劇場を壊したくないから」というのがあるらしい。そんな理由で戦争をしないなんてあり得るのか、と衝撃を受けた記憶がある。
街を歩くとよく耳にする言葉がある。“Pura Vida”、直訳すると「純粋な人生を」という意味だ(もっとしっくりくる訳語があるとは思うけれど、どうしても見つけられない)。
人と別れるとき、バイバイの代わりにこの言葉が使われることもあるほど、日常的に使われる。
コスタリカの人にとっては大事なのは、「人が人らしく生きていくこと」ただそれだけの非常にシンプルなことである。「教育を大切に、自然と暮らし、芸術に触れ、そして人生をシンプルに愛する」そんな感覚が当たり前のように染み込んでいる。
だから僕もコスタリカに滞在している時は、水筒にコーヒーを入れ、本を片手に公園に行くという生活を自然としていた。そんなことが当たり前に行われている国なのだ。
僕はそんな感覚を忘れたくなくて、初めてコスタリカに行った時に“Pura vida”と書かれたキーホルダーを購入し、今でも身につけている。そしてこのストラップを見るたびに、公園に本を持ってお出かけしたくなるのだ。